解説
このツールは、Samba(7)スイートの一部である。
Samba の net ユーティリティは Windows や DOS に存在する
NET コマンドと同様の位置づけのものである。
先頭の引数は、コマンドを実行する際に使用するプロトコルを指定するために用いられる。
ADS は Active Directory が、RAP は従来の (Windows 9x / Windows
NT 3.x) クライアントが、 RPC は Windows NT 4.0 および Windows
2000 によって使用されている。
この引数が省略された場合、 net コマンドはプロトコルを自動判別しようとする。
すべてのコマンドがすべてのプロトコル上で使用できるわけではない。
コマンド
TIME
NET TIME コマンドにより、リモートマシンの時刻を表示させたり、ローカルサーバの時刻をリモートサーバの時刻に同期させたりすることが可能となる。
TIME
オプションを指定しなかった場合、 NET TIME コマンドはリモートのサーバの時刻を表示する。
TIME SYSTEM
リモートマシンの時刻を /bin/date が認識できる形式で表示する。
TIME SET
ローカルサーバの日付と時刻を /bin/date コマンドを用いてリモートサーバの日付と時刻に設定させる。
TIME ZONE
リモートマシンの時間帯を GMT からの差分で時間単位で表示する。
[RPC|ADS] JOIN [TYPE] [-U username[%password]] [options]
ドメインに参加する。サーバ上にコンピュータアカウントがすでに存在しており、
[TYPE] が MEMBER の場合、マシンの参加は自動的に行なわれる
(コンピュータアカウントがサーバマネージャで作成済の場合)。
それ以外の場合は、パスワードの入力が求められ、新しいコンピュータアカウントが作成される。
[TYPE] は、ドメインに参加するコンピュータのタイプを指定するもので、
PDC, BDC, MEMBER のいずれかの値をとる。
[RPC] OLDJOIN [options]
ドメインに参加する。従来の方式によるドメイン参加を行なう場合は、
OLDJOIN オプションを使用すること。
参加を行なうには、事前にサーバマネージャでコンピュータアカウントを作成しておくことが必要である。
[RPC|ADS] USER
[RPC|ADS] USER DELETE target
指定したユーザを削除する。
[RPC|ADS] USER LIST
ユーザの一覧を出力する。
[RPC|ADS] USER INFO target
指定したユーザの所属するグループ一覧を出力する。
[RPC|ADS] USER ADD name [password] [-F user flags] [-C comment]
指定したユーザを追加する。
[RPC|ADS] GROUP
[RPC|ADS] GROUP [misc options] [targets]
グループの一覧を表示する。
[RPC|ADS] GROUP DELETE name [misc. options]
指定したグループを削除する。
[RPC|ADS] GROUP ADD name [-C comment]
指定したグループを作成する。
[RAP|RPC] SHARE
[RAP|RPC] SHARE [misc. options] [targets]
指定したサーバが公開しているすべてのリソース(ネットワーク共有)の一覧を出力する。
[RAP|RPC] SHARE ADD name=serverpath [-C comment] [-M maxusers] [targets]
サーバに共有を追加する (export を有効にする)。Maxusers
は共有に同時に接続できるユーザの数を指定する。
SHARE DELETE sharenam
指定した共有を削除する。
[RPC|RAP] FILE
[RPC|RAP] FILE
リモートサーバ上でオープンされているファイルの一覧を出力する。
[RPC|RAP] FILE CLOSE fileid
リモートサーバ上にある fileid
で指定したファイルをクローズする。
[RPC|RAP] FILE INFO fileid
指定した fileid のファイルの情報を出力する。
現在表示されるのは、以下の情報である: file-id, username, lock, path, permission
[RAP|RPC] FILE USER user
指定した user がオープンしているファイルの一覧を出力する。
SESSION
RAP SESSION
オプションなしの場合、 SESSION は指定したサーバ上のすべてのアクティブな
SMB/CIFS セッションの一覧を表示する。
RAP SESSION DELETE|CLOSE CLIENT_NAME
指定したセッションをクローズする。
RAP SESSION INFO CLIENT_NAME
は指定したクライアントがオープンしている共有の一覧を出力する。
RAP SERVER DOMAIN
ドメインもしくはワークグループ内のサーバの一覧を出力する。
デフォルトの対象はローカルドメインである。
RAP DOMAIN
現在ネットワークで表示可能なドメインおよびワークグループの一覧を出力する。
RAP PRINTQ
RAP PRINTQ LIST QUEUE_NAME
サーバ上の指定された印刷キューおよび印刷ジョブの一覧を出力する。
QUEUE_NAME が省略された場合、キューの一覧が出力される。
RAP PRINTQ DELETE JOBID
指定された ID の印刷ジョブを削除する。
RAP VALIDATE user [password]
指定したユーザがリモートサーバにログオン可能かどうかを確認する。
コマンドラインでパスワードが指定されなかった場合は、入力を求められる。
RAP GROUPMEMBER
RAP GROUPMEMBER LIST GROUP
指定したグループのメンバ一覧を出力する。
RAP GROUPMEMBER DELETE GROUP USER
グループからメンバを削除する。
RAP GROUPMEMBER ADD GROUP USER
グループにメンバを追加する。
RAP ADMIN command
指定した command をリモートサーバ上で実行する。
OS/2 サーバに対してのみ機能する。
RAP SERVICE
RAP SERVICE START NAME [arguments...]
リモートサーバ上の指定したサービスを起動する。現在実装されていない。
RAP SERVICE STOP
指定した、リモートサーバのサービスを止める。
RAP PASSWORD USER OLDPASS NEWPASS
USER のパスワードを OLDPASS から NEWPASS に変更する。
LOOKUP
LOOKUP HOST HOSTNAME [TYPE]
指定したホスト名およびタイプ(NetBIOS サフィックス)の IP アドレスを検索する。
タイプのデフォルトは 0x20 (workstation (訳注: server の誤り)) である。
LOOKUP LDAP [DOMAIN]
指定した DOMAIN の LDAP サーバの IP アドレスを検索する。デフォルトはローカルドメインが対象となる。
LOOKUP KDC [REALM]
指定した REALM の KDC の IP アドレスを検索する。
デフォルトはローカルなレルム(realm)が対象となる。
LOOKUP DC [DOMAIN]
指定した DOMAIN のドメインコントローラの IP アドレスを検索する。
デフォルトはローカルドメインが対象となる。
LOOKUP MASTER DOMAIN
指定した DOMAIN もしくはワークグループのマスタブラウザの IP アドレスを検索する。
デフォルトはローカルドメインが対象となる。
CACHE
Samba は 'gencache' という汎用のキャッシュインタフェースを用いている。
これは 'NET CACHE' コマンドにより制御可能である。
タイムアウトに関するパラメータはすべて、以下のサフィックスをサポートしている:
s - 秒 |
m - 分 |
h - 時 |
d - 日 |
w - 週 |
CACHE ADD key data time-out
指定した key と data の組合せを time-out の期限でキャッシュに追加する。
CACHE DEL key
key をキャッシュから削除する。
CACHE SET key data time-out
既存のキャッシュエントリの data を更新する。
CACHE SEARCH PATTERN
キャッシュデータの中から指定されたパターンを検索する。
CACHE LIST
現在キャッシュに格納されているアイテムの一覧を表示する。
CACHE FLUSH
現在キャッシュに格納されているアイテムをすべて消去する。
GETLOCALSID [DOMAIN]
指定されたドメインの SID を表示する。
パラメータが省略された場合、ローカルサーバが所属するドメインの SID を表示する。
SETLOCALSID S-1-5-21-x-y-z
ローカルサーバが所属するドメインの SID を指定した SID に設定する。
GROUPMAP
Windows のグループ ID と UNIX のグループ ID との対応づけを行なう。
パラメータは「parameter=value」の形式で指定する。共通のオプションを以下に示す:
unixgroup - UNIX のグループ名
ntgroup - Windows NT のグループ名 (SID が解決可能である必要がある。)
rid - 符号なし 32 ビット整数
sid - 「S-1-...」形式の完全な SID
type - グループのタイプ。「domain」、「local」もしくは「builtin のいずれか。
comment - 任意の文字列によるグループの説明
GROUPMAP ADD
新しいグループマップのエントリを追加する。
net groupmap add {rid=int|sid=string} unixgroup=string [type={domain|local|builtin}] [ntgroup=string] [comment=string]
GROUPMAP DELETE
グループマップのエントリを削除する。
net groupmap delete {ntgroup=string|sid=SID}
GROUPMAP MODIFY
既存のグループマップのエントリを変更する。
net groupmap modify {ntgroup=string|sid=SID} [unixgroup=string] [comment=string] [type={domain|local}
GROUPMAP LIST
存在しているグループマップのエントリの一覧を表示する。
net groupmap list [verbose] [ntgroup=string] [sid=SID]
MAXRID
ローカルサーバ上で (有効な「passdb backend」パラメータにより) 現在使用可能な RID の最大値を出力する。
RPC INFO
リモートサーバが所属するドメインの、ドメイン名、ドメインの SID 、ユーザおよびグループ数といった情報を出力する。
[RPC|ADS] TESTJOIN
ドメインへの参加がなお有効であるかどうかを確認する。
[RPC|ADS] CHANGETRUSTPW
ドメイン間信頼のパスワードを強制的に変更する。
RPC TRUSTDOM
RPC TRUSTDOM ADD DOMAIN
DOMAIN のドメイン間信頼アカウントをリモートサーバに追加する。
RPC TRUSTDOM DEL DOMAIM
DOMAIN のドメイン間信頼アカウントをリモートサーバから削除する。
RPC TRUSTDOM ESTABLISH DOMAIN
信頼するドメインとの間の信頼関係を締結する。
ドメイン間信頼アカウントが、リモートの PDC 上にすでに作成されていることが必須である。
RPC TRUSTDOM REVOKE DOMAIN
信頼されたドメインとの間の信頼関係を破棄する。
RPC TRUSTDOM LIST
現在のドメイン間の信頼関係を一覧表示する。
RPC ABORTSHUTDOWN
リモートサーバのシャットダウンを中止する。
SHUTDOWN [-t timeout] [-r] [-f] [-C message]
リモートサーバをシャットダウンする。
- -r
シャットダウンの後に再起動する。
- -f
全てのアプリケーションを強制的に終了させる。
- -t timeout
シャットダウンする前のタイムアウトの時間を設定する。
システムにローカルログオンできるユーザは、
この間にシャットダウンの要求をキャンセルできる。
- -C message
シャットダウンの通知を行なう際に、指定したメッセージを画面上に表示する。
SAMDUMP
リモートサーバの SAM データベースを表示する。
これは BDC 上で実行する必要がある。
VAMPIRE
リモートサーバからユーザ、エイリアス、グループをローカルサーバ上にエクスポートする。 BDC 上でのみ実行することが可能である。
GETSID
ドメインの SID を取得して、ローカルの secrets.tdb に格納する。
ADS LEAVE
リモートホストを所属しているドメインから外す。
ADS STATUS
ADS において、ローカルマシンのコンピュータアカウントの状態を表示する。
表示内容は、デバッグ情報のようなものであり、開発者向けのものである。
一般のユーザは NET ADS TESTJOIN を使うべきである。
ADS PRINTER
ADS PRINTER INFO [PRINTER] [SERVER]
SERVER 上にある PRINTER を検索する。
プリンタ名のデフォルトは「*」であり、サーバ名のデフォルトはローカルなホスト名である。
ADS PRINTER PUBLISH PRINTER
指定したプリンタを Active Directory に対して公開する。
ADS PRINTER REMOVE PRINTER
指定したプリンタを Active Directory のディレクトリから削除する。
ADS SEARCH EXPRESSION ATTRIBUTES...
Active Directory のサーバに対して低レベルな LDAP 検索を行ない、その結果を表示する。
EXPRESSION は標準の LDAP 検索表記で行ない、 ATTRIBUTES は結果中に表示する LDAP フィールドの一覧である。
設定例: net ads search '(objectCategory=group)' sAMAccountName
ADS DN DN (attributes)
Active Directory のサーバに対して低レベルな LDAP 検索を行ない、その結果を表示する。
DN は標準の LDAP DN であり、 ATTRIBUTES は結果中に表示する LDAP フィールドの一覧である。
設定例: net ads dn 'CN=administrator,CN=Users,DC=my,DC=domain' SAMAccountName
ADS WORKGROUP
指定された Kerberos レルムのワークグループ名を表示する。
HELP [COMMAND]
指定されたコマンドの仕様方法の情報を提供する。
作者
オリジナルの Samba ソフトウェアと関連するユーティリティは、
Andrew Tridgell によって作られた。Samba は現在 Linux カーネルが
開発されているような方法でのオープンソースプロジェクトである
Samba Team によって開発された。
net マニュアルページは Jelmer Vernoij によって執筆された。